態度能力
態度能力診断テストは1965年に開発されて以来、延べ10万社 1000万人以上の人々が受検されています。また、企業の方々のご 協力により、300職場3000人以上のサンプリング調査を実施している信頼性の高いテストです。
この冊子および態度能力診断テストが、人事関係の仕事に携わる方々の問題解決の一助になれば幸いです。


1.態度能力とは何か

能力イコール 行動を起こさせる力
「Aくんは営業のことをよく知っている」「Bさんは数力国語を話せる」私たちは、人を評価するとき、よくこういう言い方をします。言い換えれば、彼・彼女は 能力が高い、ということを暗に示しているわけです。
では、能力とは何でしょうか。能力とは、「行動を起こさせる力」のことです。職業人には、職業人として求められる行動があります。その求められる行動を起こさせる力が能力なのです。
能力を判断したり、評価したりする際、企業においては、「知的能力」(論理的思考力、問題解決能力、見通し力、学習能力など)と、「技能・技術的能力」の2つのモノサシを用いるのが一般的です。
もちろん、この2つは重要な能力ですが、さらに仕事の業績に深く関係する能力があることが、種々のデータ によって明らかになっています。


パーソナリティをみる 第3のモノサシ
したがって、人間の能力を測るモノサシは、知的能力、 および技能・技術的能力だけでは十分ではありません。
第3のモノサシが必要になってきます。それが「態度能力」なのです。
態度能力とは、やる気、親和性、リーダーシップ、精神面や感情・情緒面の安定性など、いわゆるパーソナリティにかかわる能力のことです。意欲を持って仕事に取り組む力、対人関係を円滑に処理していく力、組織に抵抗なく順応する力であり、企業社会で活躍するためには 欠かせない能力です。
また、態度能力は比較的後天的に形成されるものなので、本人の努力や教育・訓練によって伸ばしていくことができます。

2.態度能力を構成する14の特性項目
態度能力は、次の14の特性項目で構成されています。
①積極性、②協調性、③慎重性、④責任感、⑤活動性、 ⑥持久性、⑦思考性、⑧自主性、⑨自己信頼性(または
自信度。以下同)、⑩共感性、⑪指導性、⑫感情安定性、 ⑬規律性、⑭従順性。
これらの特性項目は、①~④までが「基礎診断項目」、 ⑤~⑭までが「個別診断項目」に分けられます。
基礎診断項目
基礎診断項目は、どんな業種や職種にも共通して必要とされる特性項目であり、基礎的職場適応力の水準を知ることができます。
例えば、外向的なタイプと内向的なタイプの、2人の新人営業担当がいるとしましょう。外向的な営業担当のほうが早く職務に適応し、販売実績を着実にあげていく …これが一般的な見方でしょう。
ところが、意外なことに、内向的な営業担当の中に、 高い販売実績をあげている人が少なくありません。彼ら・彼女らは、有効な販売方法をよく考えて工夫する傾 向があるからです。つまり、彼ら・彼女らは、販売目標を達成するために必要な態度を苦心して開発しているのです。
内気なパーソナリティであっても、積極的態度を持っ て販売にあたるということは十分にありうることです。
個別診断項目
個別診断項目は、職種ごとに必要とされる、さらに特殊な態度能力です。
例えば、技術・開発系の職種に求められる態度能力は、 慎重性、活動性、持久性の3つです。すなわち、思慮深く、細かいところに注意が行き届き、しかも細かいことをコツコツとねばり強く遂行し、かつ体を動かすことを いとわず、まめに働く、といった特性です。 彼ら・彼女らが1日も早く組織に溶け込み、業績をあげるようにするためには、自社が求める職務要件に適合する態度能力を正確に把握することが大切になります。


3.いま、なぜ態度能力が求められているのか
企業が態度能力を重視するようになった背景として、 次の2つのことが考えられます。1つは求められる人材の変化であり、もう1つはプロフェッショナル人材の重用です。
求められる人材の変化

グローバル化の進行、成果主義の浸透など、企業を取り巻く環境の変化にともない、新しい人材が必要との観点から、各企業の採用方針に変化が見られるようになりました。学業成績にこだわる企業が少なくなってぎたのです。代わって、企業は次のような好ましい人材を求め始めています。

好ましい人材の12の特性
①明るい人…感情安定性、共感性
②人と協力できる人、チームワークのよい人…協調性、共感性
③ストレスに強い人…感情安定性
④自らを語る能力のある人…自己信頼性、自主性
⑤感受性の強い人…共感性、感情安定性、自主性
⑥タフな人…積極性、活動性、持久性
⑦柔軟な心を持っている人…思考性、共感性
⑧気力のある人…持久性
⑨広い視野を持っている人…思考性
⑩問題意識を持っている人…思考性、自主性
⑪自立心の強い人…自主性
⑫チャンスをつかめる人…自主性、共感性

企業が考える好ましい人材はすべて、態度能力の特性項目に合致していることがわかります。ちなみに、④の自らを語る能力のある人とは、自分のやりたいことや考えを明確に表現できる人、つまりコミュニケーション能力にすぐれた人のことです。

プロフェッショナル人材の重用
企業が唱える成果主義、実力主義の掛け声に呼応して、プロフェッショナルな人材が求められるようになってきました。これは裏を返せば、「何でもできる」ゼネラリストはいらない、ということなのでしょう。
ここでいうプロフェッショナルは、「仕事の専門家」を指すのが一般的です。しかし、それだけに限定するの は今日的ではありません。それに加えて、「生きる能力と生きる知恵を持つ人」ともっと広く解釈することもで きます。つまり、職業人としてもひとりの人間としても、 社会で立派に通用する人材のことです。
その意味で、社内はもちろん社外でも通用する市場価値のある人は、真のプロフェッショナルといえます。
このプロフェッショナルに必要不可欠なのが、自律的人間としての態度です。自律的人間に求められる条件は、 表に示すように3つあります。 人が自ら変わり、進歩する要因は、まさに自分で決定する満足感や、自分で決めたことの結果がもたらす自信にあります。

自律人間の3条件
第1条件「自覚」
●自分自身のことをよく知っている
●自分の心の中の声に耳を傾けることができる
●自分のやるべきこと、やっていることを理解できる

第2条件「自発」
●自分で選び、決定できる
●決定によって生じる責任を自分でとる

第3条件「親和」
●社内の人間や顧客の言葉によく耳を傾ける
●信頼関係を築き、親和的な態度で接する

もちろん、外側からの動機づけ、すなわち上司の働きかけなどによっても、個々人の満足感や自信を高めるこ
とができるのは、いうまでもありません。
自律的人間の3つの条件は、態度能力からチェックできます。

企業社会との接点づくりのかなめ
態度能力の骨格を成しているのは、対人関係処理能力と意欲です。
対人関係が円滑な人は心が開かれた人であり、企業社会との接点をそれだけより多く持てる人でもあります。
企業社会との接点をより多く持てる人は、そうでない人よりも、より上手に職場に適応できることになります。
また、意欲のある人は、自らすすんで環境や人になじもうと働きかけますし、仕事への取り組みも積極的です。
対人関係をよくしようと努めたり、意欲を紡ぎ出そうとする努力は、これからの時代を生き抜いていくうえで欠かせません。
時代は、人間性豊かな、生きるカを持ったプロフェッショナル人材を必要としています。だからこそ、仕事を成し遂げるための知的能力や技能・技術的能力以上に、態度能力が求められているのです。


態度能力が業績を向上させる
仕事を遂行する際、態度能力と業績は、どう関係してくるのでしょうか。これは、図に示す「システム論」で考えることができます。
数年前から、企業内で「コンピタンス」という言葉が頻繁に使われるようになりました。コンピタンスは、次の2つの要素で構成されています。
1つめは、例えば、「目標を達成するぞ!」という、やる気(意欲)です。2つめは、能力です。ここでは、能力の内容として態度能力をあげています。やる気が出れば能力は高くなり、能力が高まればやる気も高くなり ます。
この2つの要素から、コンピタンスは潜在能力とみなすことができます。コンピタンスには、基本的に自信を支える機能があります。
そして、コンピタンスは、社内外からの心理的・社会的刺激に影響を受けます。心理的刺激とは、管理者のリーダーシップや教育・訓練を指します。社会的刺激とは、昇給・昇進や報奨などのことです。
業績は直接には自信と関係していますから、自信の程度が高まれば、業績もまた高くなります。自信と業績は、比例関係にあります。


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